月が綺麗だからなんだって話で

アセクシャルな人間の日々の雑記

おいてきたもの

昔から、なんだかおかしいなぁとは思っていた。お友達と好きな人の話をしていると、私の「好き」は兄弟愛みたいな感じだった。仲の良い男の子に、お兄ちゃんや弟に対して思う大好きを重ねていた気がする。

だから、付き合いたいと思ったことなんて一度もないし、キスをしたい、その先に進みたいと思ったこともなかった。でも、とてもとても大切だった。「好きな人」には幸せでいてほしかった。私じゃなくていいからと、その人を全力で応援した。

 

大切だからだと思っていた。

 

今、私にはとても大切な男友達がいる。そもそも私自身男だとか女だとかの感覚が薄いので、友達に男も女もないのだけれど、表記上わかりやすく「男友達」とする。彼は一歳下で小学生の頃からの知り合い。彼が一八歳で上京してきた時、先に大学進学で上京していた私と再会した。それから月に数回出かけるようになり、周りから見るとカップルに見えるような距離感になった。お互いの食べ物を食べさせたり、顔をくっつけてものを見たり、冬にバイクの二人乗りをして、私は彼のポケットに手を突っ込んだり。家にも来るようになって、彼はお風呂上がりにパンイチで部屋に入ったり、夜は二人同じベッドでくっついて寝たりした。

 

でも、気持ちのいいほどにお互い何も起こらない。

 

彼が何を思っていたかは知らないけれど、少なくとも私は、一緒に寝る時に近くてドキドキするどころか安心できてすぐ眠れたし、バイクの後ろも初めての感覚で楽しかった。食べ物をあーんするのだって単純に一口あげたいからで、顔の近さなんで何も気にならない。

彼に対しても、弟みたい、お兄ちゃんみたい、そんな感情だった。だから、自分以上に大事な人なのだけれど。

 

私の周りの人に聞いてみると、恋愛感情を持たないとできない、そう言われた。さらに、付き合いたいと思わないの?とも。私もずっと考えていた。どうして付き合いたいと思わないのか。そう、全くもって彼と付き合いたいと思わないのだ。彼だけではなく、他の誰とも。年齢性別関係なく。付き合うと、恋人になる。恋人になると、安心できる。楽しいことが増える。共有することが増える。欲が生まれる。そういうことも含めて、恋人になる。

 

私は昔から、この流れの「安心できる」だけが欲しくて、他はいらないと思っている。何をどう間違えたのか、他の欲が全く湧かないのだ。なかなかに不安定なメンタルを持ち合わせているので、そこに寄り添ってくれる人がいたら少しは楽になるなぁ、と思う。でも、それ以外はいらない。

その人の辛いこと悲しいこと、そういうことは共有できる。でも、手を繋ぎたい、キスがしたい、セックスがしたい、そういった「相手に触れたい」欲がない。

これはつい最近知った。ショックだった。自分は恋愛して結婚して、子供を産んで、家庭を築いていくんだろうと思っていた。実際の私はそのスタート地点にすら立てない。

 

恋愛、が、できない。

 

何をもって恋愛とするか、ということにもなってくるけれど、触れたくなければ恋人にならなくてもいいのでは?安心だけが欲しいなら、分かり合えている大切な友達で十分では?

その先が、私の中では存在できない。

自分の理想と、現実が噛み合わないことについ先日気がついた。そうしたら今までの違和感も納得できてしまった。

 

私はどうやら、母のお腹の中にひとつ感情をおいてきてしまったらしい。