月が綺麗だからなんだって話で

アセクシャルな人間の雑記

恋愛ができないはずの私に恋人ができたら、それはもう私が不利なのです

もともとアセクシャルだと思っていた私に恋人ができてもう1年と半年弱。

なぜ「恒久的に身体的接触が必要なく、恋愛感情を持たない」と思っていた私が恋愛ができているかというと自分でも謎だけれど、この人と一緒にいたいと思って、奇跡的に相手もそう思ってくれていたから恋人になった。

付き合ってからは当たり前のようにキスもセックスもするし、この人とずっと一緒がいいと思うし、嫉妬もする。昔はとてつもない拒絶反応を示していた「女であること」にも徐々に抵抗がなくなっていった。「女であること」が当たり前になった今の私は、身体的接触も必要だし、愛情もある。

恋かどうかと言われると、ちょっとよくわからない。なんだかそんなに軽い話じゃない気もする。

 

私は常によくわからないことを言って恋人を困らせてしまう。今日もまた恋人にぶちまけて、いつもよりもさらに困らせてしまった。

私の「気にしないでいよう」という心が折れてメンヘラ化するくらいに溜め込んでいたこと、それが、

「どうして他のいろんな女の子を、そんなにたくさん目で追うの?どうしてかわいいとか、エロいとか言うの?どうしてそんなにたくさんの女の子を見るの?」

ということ。

過去にもこのことで私が一方的にけんかをふっかけたことがあったのだけれど、その時にもうこればっかりはこの人は意地悪でやってくるし、あまり気にしないようにしよう、見ていることを私が見なければいい、と一度自分の中で飲み込んでいた。それはもちろんずっとうまくいっていたし、私もかわいい女の子は好きだから、「あの子かわいいよ」という言葉に「本当だね、かわいい」と返すこともできていた。かわいく嫉妬できていたらいいや、というくらいにおさまっていた。はずなのだけれど…。

 

今日のデートの終盤、私は突然その時間までの、恋人氏の視線の先が女の子だらけで、私の耳に届く言葉が他の女の子についてで、私の話も中途半端に顔ごと他の女の子を追う姿がリフレインしてしまい、どうしてか我慢ができなくて、私の中のメンヘラちゃん爆誕した。

「もう無理!がまんできない!私が隣にいるのにどうして他の女の子ばっかり気にするの!私のことしか見えなくなってよ!!」と。

 

そこからはもうお互い地獄。

「なんでよそ見ばっかりするの?」

「してないよ」

「私のこと褒めないのにどうして他の人は褒めるの?」

「ちゃんと着替えた直後に褒めてるよ」

「なんで他の人をかわいいとかエロいとか思うの?」

「男として【こういう女とヤリたい】という目線でパッと追ってしまう部分がある、実際に手を出すわけではないにしてもね」

「なんでかわいいとかエロいとかを私に言うの?」

「かわいい人がいるって情報として単純に共有したかっただけだよ」

この答えを聞き出すために、1時間私はうだうだめそめそし続け、1時間恋人氏は追求された。生産性のない時間、苦痛しか生まない。

「ごめんね」「ごめんじゃなくて、なんでなの?」としつこく迫ってここまで聞き出して、納得するために導き出した(逃げた)私の答えは、「種として、雄として雌を追うのはもう遺伝子レベルで決まっていることなので理性でコントロールできるところではない、理性が働くのはこれよりももう少し表層の、手を出すかどうかというところからなのだ」、以上。

こう考えると、彼がデート中にもかかわらず女の子たちを目で追ってしまうのはもはや脊髄反射、理性の及ばない範囲のことなのだと解釈した。ここは解決。

 

私が理解できなかったのが、「【ヤリたい】と思って目で追う」=「性的対象として恋人以外を見ることができる」という点。いやいやそこまでひどいこと言ってないよ、という反論もあるかもしればいけれど、一旦この理論でいかせていただくと、私にはこの「性的対象」として頭を動かせる人が恋人の他にいないのだ。だから、そこがわからなかった。

私が恋人に対して重くて一途すぎるだけ、ということももちろんあるのかもしれないけれど、恋人も私のことをとても大切に思ってくれているし、愛してくれてもいる。それを私もわかっているし、私が恋人のことをとても大事に思っていることを彼自身も知っている。知っている上で、あぐらをかいてもいない。だからこそ、私の中で彼が本当に「性的対象として異性を追っている」というのがより問題視されてしまうのだ。

 

冷静に考えてみると、私は今の恋人以外に性欲が抱けない。一人で性欲をどうにかすることもないし、実際触ってみても何も感じない。恋人といちゃついてる最中に自分で触れさせられても急に真顔になるくらいなんともない。

私の中でそういう快楽や快感と繋がっているのは事実として恋人しかいないのだと思っている。

ちなみに元彼は嫌悪感しかなかったので、その部分の不一致で別れたし、クッソ寂しいと思った時も一緒にご飯を食べてくれる人がいたらそれで十分だった。多分もし何かがあって今の恋人がいなくなってしまったとして、その時私は新しい恋愛対象を求めないと思う。この人が好きすぎるから、という意味ではなく自分の性的指向として。

 

恋人を除けば、彼と付き合う前に持っていた「触れたい欲がない」というのはそのまま残っているような気がしている。

私もさすがに社会人で毎日いろんな人と顔を合わせているので、言い方は悪いけれど、ピンからキリまで物色できる機会は十二分にある。「この人仕事ができる人で素敵だなぁ」「この人は優しいなぁ」「好きな顔だなぁ」ということは思うけれど、それは「恋愛対象」として意識していないし、この人たちに性を感じたくない気持ちもとても強い。これも恋人のことが大好きだから、ということよりも「(恋人を除く)他人に性的魅力を一切感じない」と考える方がしっくりくる。

 

そう思うと、「他者への性的な魅かれの少ない人間」にどうしてか奇跡的に「全てを許せる人」が現れて、その人のたゆまぬ努力の成果として今の私がいる気がした。

だから私の深層部で「他者に性的に魅かれる人間」の言動が理解できないのだと思う。

 

とはいえメンヘラ化して恋人のことを追い詰めていいことにはならないし、むしろこの人しかダメな気がするのならなおさら大切にしないといけないのだから、全くもっとしっかりしろよという気持ちで今はいっぱいなのだけれど。

何はともあれ、恋愛感情がしっかりあって、他の誰のことも性的にみられる人のことを、ヘテロを手放せなくなった中途半端なアセクシャルが負けなのだろうね。