月が綺麗だからなんだって話で

アセクシャルな人間の雑記

興奮ひとつ飼い慣らせない

この衝動を吐き出す術を持つ人たちが羨ましい。今すぐこの激情を解放したい。

大人しく電車の吊革を持って立っているが、電車に渋谷まで運んでもらっているが、可能なことならこの電車に並走して自宅まで走りたい。ビルの屋上まで階段を駆け上がって飛び降りたい。バイクで大きな道路を駆け抜けて横切るダンプカーに突っ込んで粉々になりたい。全身バラバラになってしまいたい。

間違えないでほしい!

好んで死に向かっているわけではない!

ただ、隣に死が来ても全く気が付くことができないほどの情動が今!

私の身体を突き破って外へ出たがっているのだ!!

 

死ぬ。持て余している。言葉にすることのできない衝撃や感動、羨望、興奮、やわらかければ快感になりうるもの全てが、私という人間が留め置ける範疇を超えて暴れ倒している。具合が悪い。

おそらくこれを「当てられている」というのだろう。善きも過ぎれば毒となる。天使と悪魔は表裏一体。天国も地獄も死の先の場であることは同じ。ああ、吐きそうだ。殺してくれ。殺してくれ!

 

たくさんのアーティストの魂のこもった舞台を見て、彼ら彼女らを応援しているファンの大きな歓声を聞いて、自分の応援するアーティストの姿に興奮して、憂は無く一喜十喜百喜。

己の神は尊く、存在がありがたく。彼女の一挙一動、一挙手一投足、瞬きのひとつまで全てを拾いたく、目玉がこぼれ落ちんばかりに目を見開き、彼女の網膜に光が届けばと必死に彼女の好きな色のペンライトを振った。私の座席の後ろでごちゃごちゃと「そこ私の席なんですけど」とやりとりしていたアイツらはこれから先のライブのチケット全落しろ。私と彼女のかけがえのない時間の邪魔をしてくれるな。

ここまで多種多様な熱を浴び、己も帯びると、細々とした興奮が乱反射するように身体の中を駆け巡り、内側から殴りつけてくる。出たい、出たいと暴れている。出したい、私だってこの興奮を表に出したい、ただ出す術がない!!

こんな時に音楽やダンスを、自分を表現しうるものとして所持できていたらどんなによかっただろう。今すぐにでもこれを、この言葉にできない感覚を、どうにかして!外に放出することができるのに!!

 

ああ死にそうだ、死にそうだ。

私になる前のこの衝動を飼い慣らせず、殺されてしまいそうだ。

ひどく悔しい。私の感情は全て私の支配下で湧き起こりおさまらなければならないのに。

人間になって久しいのに私は、まだ、自分の興奮ひとつ昇華できない。

 

音楽とダンスが私の手の中にあればよかったのに。